ビジネスの海外展開において重要な外国語のホームページ制作は、幅広い方法があるため、どのように進めていけばよいかわかりにくいところがあります。語学力だけではなく、WEBマーケティングやSEOの知識も必須なのです。今回は既存の日本語ホームページをもとにした効果的なコンテンツ制作やSEO施策を行うためのポイントをまとめます。
言語の選定よりも、ターゲットの絞り込みが重要
外国語のホームページ制作と一口にいっても、実にさまざまな工程があります。はじめに考えなければならないことは「何語に翻訳するか」ということだと思われがちですが、何よりも先に決めるべき最重要事項はローカライズ先の選定です。
例えば、自社のWEBサイトを英語に翻訳するケースを考えてみましょう。英語を使う国は、アメリカやイギリス、オーストラリアなど数多く存在します。それぞれの国によって文化や習慣が異なり、文法や表現も微妙に違います。そのため、「英語版を制作する」というだけでは、スムーズに制作を進めることは難しく、ターゲットとなる国やエリアをしっかりと想定することが重要です。
マーケットの把握にGoogle「グローバル マーケット ファインダー」
それでは、ターゲットとなる国やエリアを選定するにはどうすればよいのでしょうか。自社の製品やサービスの需要があるエリア、あるいはマーケットの成熟度などを調べる際に活用できるのが、Googleが提供するサービス「グローバル マーケット ファインダー」です。
「グローバル マーケット ファインダー」は、Google検索における特定のキーワードの検索ボリュームとともに、それぞれの国でのビジネスチャンスを指標化して表示します。使い方はとても簡単です。仮に、日本の製菓メーカーが自社のチョコレート製品を海外に展開したいと考えているとします。製品WEBサイトをどこに向けてローカライズすればよいか需要を調べてみましょう。
まず、「グローバル マーケット ファインダー」にアクセスし、「自社のビジネス」の「地域」と「言語」の項目で「日本」と「日本語」を選びます。次に「検索クエリ」に「チョコレート」と入力し、フィルタで検索対象国のカテゴリを選択。ここでは「G20」を選んで、「検索」ボタンをクリックすると、ビジネスの進出機会が高い順にインドネシア、日本、アメリカとリストに表示されます。進出機会とは、「そのキーワードがどれだけ検索されているか」と、「そのキーワードでGoogleのリスティング広告を出稿したときのクリック単価」のコストとを比較分析して算出されたものです。今回の検索内容の場合、インドネシアでの「チョコレート」というキーワードの検索数は、日本やアメリカに比べると随分と少ないのですが、広告出稿費用が格段に安いことからビジネスチャンスがあると分析されたと考えられます。このように「グローバル マーケット ファインダー」はローカライズ先の選定に大きく役立ってくれるでしょう。
ローカライズ先でのSEOで失敗しないための4つの鉄則
外国語ホームページを制作するにあたって、やはり気になるのはSEO(検索エンジン最適化)対策です。ローカライズ先の検索エンジンで、制作したページが検索結果の上位に表示されるか不安になるところですよね。ローカライズ先でのSEOで失敗しないための4つのコツをご紹介します。
日本語のWEBサイトとは別にドメインを用意する
Googleは、WEBサイトがターゲットにしている国を判別して検索結果を調整していると述べています。そこで、Googleに対して、そのWEBサイトがターゲットにしている国を簡単に認識させる方法は、適切なccTLDs(国別コード トップレベル ドメイン名)を選ぶこと。ccTLDsとは、国別に用意された固有のドメインです。例えば、URLの末尾が「.jp」は日本のサイトであり、「.de」だとドイツのサイトであるといったような具合。自社WEBサイトが「.jp」であったとすると、そのままフランス語にローカライズするのは好ましくないことになります。
サーバーのホスティングはローカライズ先の国で
WEBサイトのサーバーは、ローカライズ先の国でホスティングされているものを選びましょう。これは、国外でホスティングされているサーバーのWEBサイトに対して閲覧制限をかけている国があるためです。さらに、Googleによれば、サーバーとユーザーの物理的な距離も「そのサイトがどこの国をターゲットにしているか」を判別する参考にしているとのこと。
コンテンツの自動翻訳や機械翻訳はNG
自動翻訳やWEB翻訳サービスは高機能になってきたといわれていますが、まだまだ自然な翻訳を実現するには至っていないといえます。不自然な表現は、アクセスしたユーザーに戸惑いを覚えさせるだけではありません。ネイティブが自然に使う検索キーワードや表現と翻訳内容が異なっていると、検索エンジンからの多くのアクセスを失うことにもなりかねません。
適切なワードチョイスとコンテンツの作成を
外国語ホームページの制作においては、日本語版の単なる翻訳ではなく、ローカライズ先の検索キーワードに応じて適切なワードをチョイスするのが効果的。単語レベルの検討だけではなく、コンテンツそのものをローカライズ先に合わせて調整、検討するのがベストです。
効果的なコンテンツ作成に必要な「Transcreation」
前述のとおり、ユーザーにとってもSEOの観点からも、外国語ホームページの制作において日本語版を直訳するのは好ましくありません。WEBサイトでの不自然な言語表現や文化への配慮の欠如は、綿密な市場調査や優秀な製品・サービスを台無しにしてしまいます。ローカライズ先の文化や習慣に十分配慮した翻訳を行うことが必要です。このような翻訳アプローチを「Transcreation」といいます。これは、「翻訳」を意味する「Translation」と「創造」を意味する「Creation」がかけあわされた造語で、数年前からマーケティング業界で使われるようになりました。
「Transcreation」の好例として、アメリカのコミックヒーロー「スパイダーマン」のインド市場へのローカライズが有名です。インドではアメリカ的な「スパイダーマン」はウケないと考えたプロデューサーは、原作のエッセンスを残しながら、全く異なった設定にしてコミックを作りました。スパイダーマンの正体はインド生まれの青年。さらに、衣裳デザインにはインドの伝統服ドーティーが取り入れられ、インド名の敵とタージ・マハルを舞台にアクションを繰り広げるのです。このように、直訳ではなく、ローカライズ先に特化させた思いきったコンテンツ制作が求められます。
コンテンツ作成にはネイティブライターの声を
「Transcreation」を実現させるために大切なのは、翻訳者やコンテンツのライターの選定です。日本語のネイティブに依頼すべきか、外国語のネイティブに依頼すべきか、多国語を操る翻訳者たちにもネイティブ言語があります。
ローカライズ先の文化への配慮や微妙な語感のニュアンスといった次元になると、やはり、ローカライズ先のネイティブライターにコンテンツの作成を依頼するのが最善です。もちろん個人差はありますが、バイリンガルであっても日本語のネイティブライターと、ローカライズ先のネイティブライターでは、その言語感覚や表現力に開きがあります。
そうはいっても、すべてのコンテンツをローカライズ先のネイティブライターに依頼するのは、コスト面で厳しいという場合もあるでしょう。このような場合は、日本語ホームページの直訳を翻訳業者に依頼したうえで、ネイティブライターに編集や調整のみを依頼するという手もあります。
失敗しない外国語ホームページ制作・まとめ
外国語ホームページでは、コンテンツ作成のクオリティを追求することに妥協しないことが大切。なぜなら、技術的なSEO施策と良質なコンテンツの作成は両立するからです。ローカライズのクオリティ追求は決して無駄になりません。ローカライズ先のユーザーにとってわかりやすくクオリティの高いコンテンツであれば、それは検索エンジンにも有効であり、制作コストの無駄が非常に少ないといえます。企業やサービス、製品の顔となるWEBサイトですから、「Transcreation」で魅力的なコンテンツに仕上げましょう!