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恐山
イタコの口寄せで名高い三大霊場の一つ
恐山(おそれざん)・標高879m
恐山は、下北半島の北部中央にある、円錐状火山です。「おそれやま」あるいは「宇曽利山(うそりやま)」ともいいます。直径約6kmのほぼ円形で擂鉢(すりばち)状のカルデラを有し、その中心部に標高214m、直径2kmの宇曽利山湖(恐山湖)があります。
湖の周囲には、鶏頭山(けいとうざん)、地蔵山(じぞうやま)、剣山(つるぎやま)などいくつもの峰が連なり、それらを蓮の花にたとえて蓮華八葉と呼んでいます。
宇曽利山湖は、エメラルド色の透明度の高い湖で、山の緑や真っ白な砂浜とのコントラストが大変美しく、まるで極楽のような雰囲気を作り出しています。湖の北東からは三途川(さんずのかわ)が流れており、途中で正津川(しょうづかわ)となり、津軽海峡に注いでいます。
恐山は、登山の対象というより、宗教の聖地として全国的に有名な山です。昔から死者の集まるところとされ、高野山、比叡山と並ぶ日本三大霊場の一つです。
恐山へは「上る」というのではなく、「下る」という表現が使われます。田名部から峠を越えて宇曽利湖のほとりへ下るからです。
恐山菩提寺は、約1100年前に慈覚大師によって開かれた古い寺院です。48基の常夜灯が印象的で、丘陵には卒塔婆(そとうば)、石積み、輪廻転生(りんねてんしょう)の願いを込めた風車が無数に並びます。
有名なイタコの口寄せは、7月20日~24日の恐山大祭と秋詣りの期間にだけ行われます。(開山:5月1日閉山:10月31日)
岩木山
「お山参詣」でご来光を拝む
岩木山(いわきさん)・標高1,625m
岩木山は青森県の西部、津軽平野にそびえる独立峰です。山頂は中津軽郡岩木町に含まれます。鳥海火山帯に属する円錐状の火山で、いまは休火山です。山頂は三つの峰からなり、東側の弘前市付近から眺めると、この三つの峰がよく分かります。北側から見ると、山頂は尖った円錐形に見えます。岩木山は、どの方角から見ても美しく、古くから津軽富士の愛称で親しまれてきました。現在は、山全体を広葉樹林(ブナ、ナラ、ダケカンバ)などに覆われており、新緑・紅葉の季節のみならず一年を通してすばらしい眺めです。
高山植物は、ミチノクコザクラを代表に5月下旬から8月上旬まで、たくさんの花を楽しむことができます。また、貴重な動物や昆虫もたくさん生息しています。
岩木山は、日本に仏教が伝わる前から、神の山として広く人々に親しまれてきました。仏教が東北の地にまで伝わると、主に天台宗の影響を受けます。また紀州の熊野にある本宮(ほんぐう)、新宮(しんぐう)、那智(なち)の三山を一緒に信仰する形式が、岩木山山頂の三つの峰に取り入れられます。このように、日本古来の神の教えと、外来の仏教の教えが一つになることを神仏習合といいます。
毎年旧暦8月1日、「お山参詣」が行われます。多くの人たちが白装束に身を包み、岩木町百沢(ひゃくざわ)にある岩木山神社に集まり、夜の暗いうちにお題目を唱えながら、山頂にある奥宮を目指します。津軽全域から集まってきたお山参詣の行列は、高さ数メートルの御幣を林立させて進みます。夜明け前に山頂に到着し、ご来光を拝みます。
八甲田大岳
広大な山域に生まれる雪の芸術
八甲田大岳(はっこうだおおだけ)・標高1,585m
青森県の上北郡、南津軽郡、青森市、および黒石市に広がる山塊を八甲田山とよび、荒川を境に、北八甲田連峰と南八甲田連峰とからなっており、十和田八幡平(はちまんたい)国立公園の一角にあります。八甲田大岳は、北八甲田連峰の主峰です。
たんに八甲田山といえば、通常は北八甲田連峰のことを指します。
北八甲田連峰は、八甲田大岳(標高1,585m)を主峰に、高田大岳(1,552m)、井戸岳(1,550m)、赤倉岳(1,548m)などの10峰が連なっています。南八甲田連峰には、櫛ケ峰(くしがみね、1,517m。上岳ともいう)、下岳(しただけ・1,342m)、駒ケ峯(1,416m)などがそびえています。これらの山の姿は円錐形、または屋根形で、那須火山帯に属しています。
広大な山域にはいくつもの川が流れ、奥入瀬川(おいらせがわ)、七戸川(しちのへがわ)が東へ、荒川、駒込川が北へ、そして浅瀬石川(あせいしがわ)などが西へ流れています。
植生は、標高400mを越えるとブナ林が中心となり、1,000mから上はアオモリトドマツなどの針葉樹林、さらに1,400mから先はハイマツ、ナナカマド、ミヤマハンノキなどが多くなります。頂上付近にはガンコウラン、コケモモなどが群生しています。
山麓には、酸ケ湯(すがゆ)、谷地(やち)、蔦(つた)、猿倉(さるくら)などの温泉が、豊富な湯をたたえています。
それほど急峻な山ではなく、むしろ歩きやすい山ですが、明治35年(1902)1月24日におきた日本陸軍第8師団青森歩兵第5連隊の210名の遭難が語るように、厳冬期には大変厳しい気候条件となります。この遭難事故は新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』に大変ドラマチックに描かれています。
その恐ろしい雪は、同時に美しい樹氷をつくりだし、自然の芸術を満喫することができます。
階上岳
船の目印ともなった古代の信仰の山
階上岳(はしがみだけ)・標高740m
階上岳は、青森県階上町と岩手県種市町の境界に位置します。全山花崗岩からなり、なだらかな形状をつくっています。山稜の形が、伏せた牛のように見えるところから、地元では臥牛山(がぎゅうさん)と愛称されています。また江戸時代には、種市岳、鳥屋部岳(とやべだけ)とも呼んでいました。
明治時代初めの『新撰陸奥国誌』には、松や雑木が多く茂り、太平洋に面しているため、近海を航行する船の目印になっていると説明されています。
いまも山頂には階上大明神が祀られており、また東北側の麓には階上大明神ゆかりの寺下(てらした)観音堂があり、この山が古くから信仰の対象となっていたことを物語っています。
旧暦5月15日には、白装束の人たちが頂上に登拝する慣わしが残っています。例年6月上旬に山開きが行われ、色彩鮮やかなつつじ祭りが開かれます。
釜臥山
霊場恐山ゆかりの「宇曽利山十景」の一つ
釡臥山(かまぶせやま)・標高879m
下北半島の恐山の南側に位置する円錐状の火山です。釡伏山とも書きます。恐山と深い関係にある山です。古くからの言い伝えによれば、慈覚大師円仁(えんにん)は、この釡臥山にこもっていたとき、鵜鳥が飛び立つ方向を見て、恐山の地を発見したといわれています。
江戸時代に東北地方を旅行して、各地の風景や風俗を記録した菅江真澄は、この山の雪景色を「宇曽利山十景」の一つにあげ、次の歌の残しています。
“山はもえ秋はたく火の色に染て雪には埋む釡伏の山”
また明治時代の始めの記録『新撰陸奥国誌』には、山いただからの景色を描いて、「野辺地、小港辺りの海岸は、庭に組まれた石組を見るようだ」と記されています。
白神岳
世界遺産の広大なブナ林を誇る
白神岳(しらかみだけ)・標高1,232m
白神岳は、向白神岳(むかいしらかみだけ・1,243m)とともに、白神山地の中心をなす山です。白神山地は、青森県南西部から秋田県北西部にまたがる面積約130,000haの土地の総称で、その中心部約17,000haが1993年に世界遺産に登録されました。
白神山地には、世界最大級といわれるブナ林が広がっています。ほとんど人間活動の影響を受けていないため、ほぼ原生の自然がそのままの姿で残されています。
そのため白神山地のブナ林には、大変多くの植物群が共存しており、さらにその植物に依存する多くの動物群が生きていて、自然の生態系がありのままの姿で残っています。特にツキノワグマなどのほ乳類、クマゲラなどの鳥類や昆虫類などの宝庫です。
白神山地の谷は深いV字形をなしていますが、山頂や尾根付近はむしろ緩やかな傾斜となっています。これが白神山地の地形の特色で、このような地形を隆起地帯といいます。白神山地周辺は、日本でも有数の隆起地帯です。
最高峰は向白神岳で、白神岳、真瀬岳、二ツ森、小岳、青鹿岳、摩須賀岳など、1,000m級の山々が連なっています。
白神山地には、笹内川、追良瀬川、赤石川、岩木川の上流部にあたる大川などが流れ、秋田・青森の県境付近を源流として、ほぼ一様に北に向かって流れています。
白神山地はまた滝の宝庫でもあり、西目屋村の「暗門滝」、鰺ヶ沢町の「くろくまの滝」が特に有名です。暗門滝は大川支流暗門川にかかる滝で、上流から一の滝(42m)、二の滝(37m)、三の滝(26m)の3段で構成されています。「くろくまの滝」は赤石川支流滝ノ沢にかかる落差およそ80m、幅15mの規模を誇り、青森県内では1、2を競う大型の滝です。これらの滝までは遊歩道が整備されており、安全に探勝することができます。
クマゲラは国内のキツツキの仲間では最も大きく、ほぼカラスくらいの大きさです。ですから、ねぐら穴や繁殖のための巣穴を彫る木には、直径が50cmくらいの太いブナの木が使われています。太い木ほどよいかというと、決してそうではありません。
太くても、老木にはほとんど穴を彫りません。幹がデコボコしていて、テンなどの天敵が登りやすいので使わないようです。
同じ理由で、下枝が多い木やコケやつる植物が巻きついている木はほとんど使われていません。国の天然記念物で、環境RDB(レッドデータブック)の危急種です。